救える手

昔は僕は信頼できる人物だと思っていた。
だが、今はそうは思えない。
同じ立場になったからか、同じような事をやっているからだろうか。

もともと、その人物に僕は一度負けている。
自分の愚かさや、自分の弱さと自分の未熟さに負けたのだ。
だからだろうか、無性にその人物を信頼し、その人物と親しくなろうとした。
僕の過ちの代償として。

その人物はきっと本来自由な考えの持ち主で、別に悪気があっての事ではないのだろう。
それが自然で、己の考え方を持ち、今まで生きてきたのだろう。
僕もそうだった。同じように自由に生き、自然に振る舞い、あたかも優れているかのように生きてきた。

だから必然的に衝突したのだろう。
ただ、無責任さや自我が僕には我慢ができなかったのだ。
その後和解したが、一連の出来事を無かったことのようにしたかったため、僕は信頼できる人物とした。
それは間違いだったのかもしれない。
完全には許していなかった事に気づいたのだ。それは、独立前から気づいていたんだ。

だから距離を置こうと思った。だから知らないふりをしていたかった。

そんな僕を救える手は、勝つことだ。
そしたらこの僕の葛藤は終わる。
僕は負けて、終わりたくないから。

 

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