僕が独立した理由 ②

やっと、一年たって話せるのである。当時は辛くて辛くて言えなかった。

僕は一年半前、最愛なるものを亡くした。
生まれて1ヶ月後に知り合いからもらった。
それから15年。僕は仕事が終われば急いで帰った。一刻でも早くに会いたかったからだ。
休みの日もずっと一緒に居た。そのせいで、ほとんど旅行にも行かず、里帰りも数える程しかしていない。
僕の分身、僕の命よりも大切な生命。猫のルナである。
本当の家族より僕は大切だった。誰よりも誰かよりも。この世の一番だったのだ。
おととしのクリスマスに具合が悪くなり、1週間会社を休み病院に通ったが、年が明けた1月1日の昼過ぎ、呼吸困難で亡くなった。僕の判断ミスで死に至ったのだ。

僕はこの世が終わった世界に居た。全てが色褪せて呼吸すら煩わしい。
笑顔をみると吐きそうになった。
生きているものが憎たらしいかったのだ。

「心配なら会社に連れてくれば」…お前は死ぬ寸前の子供を連れて来れるのか?「ペットは早く死ぬんだから。可愛がったと思えばいいじゃない。」…お前は自分の子供が同じような事になったら同じ事を言えるのか?
誰しもが同じように慰めた。ペットだから…。そう物のように。
「落ち着いたらまた飼えばいいじゃない。」…お前は子供が死んだら買ってくるのか?大馬鹿野郎が。
僕はペットだと思った言は一度もない。子供のように可愛がっていたんだ。
代わりを探そうなどもってのほか。この僕の気持ちを誰も分からないとは…残念である。失望した。

ある人が言った。
ルナは、僕と一緒に年を越すまで頑張ったんだと。
最後の1週間、ずっと一緒にいて、死に際に僕が隣にいた。
そして、この時期に亡くなったのは意味があるのだと。

この話の前に、独立の話が浮上した。

一人だけ僕を理解してくれた人がいた。
その一人と置いてはいけない二人を連れて、僕は独立をした。
これが僕が独立をした理由だ。

もしも、ルナがまだ生きていたら独立する事はなかったのだ。
何年後かに亡くなっていたなら、もう僕が独立する機会は過ぎていたのだから。
これは僕の運命である。

 

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